「トップガンマーヴェリック」に打ち破られるまで、トム・クルーズ主演映画では最高ともいえる興行成績をマークしていました。
海外SF映画の巨人といわれているH・G・ウエルズの「宇宙戦争」を原作にした映画です。
1953年にジョージ・パル監督でも映画化されておりますが、本作はそれのリメイクになっています。
その結末について賛否両論が分かれたものの、興行的には大成功を収めた映画になります。
目次
映画「宇宙戦争」の簡単なあらすじ
ざっくりなあらすじです。
- ニュージャージー州ハドソン群で働く肉体労働者のレイ、離婚した妻が実家のボストンに行くので子供を預かってほしいと頼まれ、二人の子供の面倒をみることとなる。
- しかし、久々に再開した子供たちはレイになついておらずほぼ反抗期気味だった。
- 翌日、異常気象が相次ぎ突如雷が地面に振ってきた。するとそこから巨大ロボットが地面から出現し、ハドソンの街を破壊し住民を虐殺し始めるのだった。
- 何とか生き残ったレイは安全な場所に逃げるため、子供たちを連れてハドソンの街を去っていく。
- しかし、時は遅くすでに世界中がロボットによる攻撃を受けていた。それ以降なんどもなんども攻撃を受けるレイたちであったが、途中で息子のロビーと離れ離れになってしまう。
- わがままな娘と残されたレイは妻の実家があるボストンへ向かうのだった。
映画「宇宙戦争」の見どころ・ここが良かった!
徹底的に何もできないまま蹂躙され殺されていく人類の無力さ
「宇宙戦争」という題材から「スターウォーズ」や「インデペンデンスデイ」のような戦闘機が飛び交い悪の宇宙人を倒す内容を連想されるかもしれませんが、そのようなチープなSF映画にはなっていません。
徹底的に人類は蹂躙され、殺されていくその無慈悲さを116分という上映時間の中でこれでもかと描きます。
無能なトム・クルーズ
トム・クルーズといえば「ミッションインポッシブル」シリーズのような荒唐無稽なアクションを思い出す人であったり、ハンサムな容貌からな「完璧な男性」的印象を持つ人も多いかもしれませんが、今作に出てくるトム・クルーズは無能・無知・役立たずの三拍子そろったダメ人間を演じています。
子供たちとろくに触れ合っていないにもかかわらず、ドヤ顔でキャッチボールをしようと言い出したり、子供たちが自分の期待に添わない行動や反抗的な態度をみせるとすぐにブチギレるなど人として問題が多くあります。
トム・クルーズの何がすごいのかというとこういうダメ人間の役でも平気でやってしまうそのすごさにあります。
怪獣映画的な見せ場の多さ
実は日本のゴジラが大好きなスティーブン・スピルバーグさんは子供のころにみた1954年の初代ゴジラやその映像の生々しさがトラウマになったといわれています。
本作でも巨大ロボットが地面から土煙をあげながら出現するシーンは1964年の「モスラ対ゴジラ」に非常によく似たシーンがあります。
さらには、ロボットが山を越えて避難民たちの前に出現するシーンは1954年の初代ゴジラで山の上から見上げながら雄たけびを上げるゴジラのシーンに非常によく似ていますよ。
スピルバーグ版ゴジラ?
映画評論家の町山智弘さんは本作は「9,11以降のアメリカのトラウマを反映させた初代ゴジラの的映画」ではないかと分析していました。
実は90年代一度ゴジラのハリウッドリメイク企画についての打診をスピルバーグは受けていたのですが、結局は断ったといわれています。
つまり、本作は実質「スピルバーグ版ゴジラ」という趣きもあるのです。
怪獣映画好きな自分にとってはこれらのシーンは非常に印象に残ったはずです。
映画「宇宙戦争」で印象に残ったセリフは?
出典:https://eiga.com/movie/1217/gallery/
大阪では何体か倒したらしい、あいつら日本人にだってやれるなら俺らだってできる
映画の終盤でトム扮するレイたちと遭遇する気の狂った男ハーラン、彼がレイたちにさりげなく教えるセリフです。
このセリフには深い意味はなく、日本の怪獣映画好きなスピルバーグ曰く「怪獣になれた日本人だったら倒せるコツを生み出せるんじゃないか」的なファンサービスの一環のセリフでしかありません。
しかしながら、大阪在住の方ならわかりますが大阪道頓堀は本当に汚く、調子に乗ってとびこんだ阪神ファンが病原菌に感染したという話をしばしば聞くことがあります。
合理的に考察すれば恐らく宇宙人たちの巨大ロボットはうっかり道頓堀に入ってしまい、そこから病原菌に感染したといえるのではないでしょうか。
映画「宇宙戦争」の総合評価&感想は?結末&ネタバレ含む
結末&ネタバレ
(ここから先はネタバレを含みますので、未見の方はご注意ください。ネタバレが気にならないという方のみお進みくださいませ。)
- レイと娘は途中で狂った男の家に避難するが、そこで家主の男と喧嘩になってしまいレイははずみで殺してしまう。
- わがままだった娘もすっかり廃人寸前状態に追い詰められ宇宙人の操るロボットにさらわれる、追いかけたレイもさらわれてしまいその時宇宙人の目的が地球人の採集であったことがわかる。
- レイは娘を採集されそうになるものの、途中で手りゅう弾を投げ込み宇宙人の巨大ロボットを戦闘不能に追い込んだ。
- やがて、ボストンに近づくレイたち親子はそこで宇宙人たちが弱り切っているのをみる。宇宙人たちは地球の病原菌に免疫がなかったのだ。
- そして、ボストンの嫁の実家にたどり着いたレイたちは息子や元妻たちが元気であったことを知ると再会を喜ぶのだった。
なんと本作の結末は人間の軍事力や兵器、作戦ではなく病原菌に宇宙人が倒されるというものでした。この結末には賛否両論の感想が多く寄せられました。
しかし、原作のネタバレに少しなりますが原作小説も実は病原菌で宇宙人が倒されるという話になります。したがって実は本作は原作の忠実な映画化になっていますよ。
評価&感想
中盤以降少々退屈になるシーンもありますが、全編スリリングで実際に宇宙人が来ればこうなるのではないかなと思う部分も多くありました。
圧倒的な破壊力を持った存在を前に地球人はなにもできない、そんな侵略SFもありではないかと個人的には思っています。
映画「宇宙戦争」の登場人物・キャスト
レイ・フェリエ (トム・クルーズ)
ハドソン群で働く肉体労働者。
わかれた妻との間に子供をもうけているが、なつかれていない。
子供たちの前で理想の父親を演じるが、ぎこちない態度から信頼されていない。
しかし、次第に子供たちとかかわるうえで父親として必要な剛直さと強さを身に着けていく。
レイチェル・フェリエ (ダコタ・ファニング)
レイの娘、10歳。
わがままで口やかましい少女。
喘息の持病を持っている。
次第に宇宙人に破壊されていく世界に戸惑い次第にやかましい態度も消えていき、レイのことを父親として認めていく。
ロビー・フェリエ ( ジャスティン・チャットウィン)
レイの息子、18歳。
長い間父のいない妹にとって父親代わりを務めていた少年。
秘めたる正義感があり、途中で父妹を捨てて米軍の義勇軍に参加。
生死不明になるが、ボストンに最終的にたどり着いたことから命だけは助かった模様。
メリー・アン・フェリエ ( ミランダ・オットー)
離婚した元妻。
レイのことを今でも心配している。
宇宙人襲撃以降、生死不明であったがボストンで実家家族とともに生存をしていたことから生き残っていたのが確認される。
ハーラン・オグルビー (ティム・ロビンス)
途中でレイたちを助ける謎の男。
精神状態が錯乱しており、宇宙人を倒すための地下自警団を組むとレイに提案するが一蹴される。
その後、地下室について揉めてレイと争いを起こし命を奪われる。
日本人を「あいつら」と言っていることから内心見下している、白人至上主義的な印象がある変人。
映画「宇宙戦争」のスタッフ
- 監督 スティーヴン・スピルバーグ
- 脚本 ジョシュ・フリードマン/デヴィッド・コープ
- 原作 H・G・ウェルズ
- 製作 キャスリーン・ケネディ/コリン・ウィルソン
- 製作総指揮 ダミアン・コリアー/ポーラ・ワグナー
- 音楽:ジョン・ウィリアムズ
まとめ
確かに賛否両論ある感想・意見をお持ちの方も多いかもしれません。
しかし、戦争は決して兵士や軍人・政治家の側だけで起きるものではなく巻き込まれる市民の側の目線も決して忘れてはいけません。
本作はそんな市民の側に寄り添った珍しい侵略SF映画の傑作になっているのではないかと思います。
また怪獣映画好きの方には怪獣映画的な場面も多くあるので非常におすすめになっていますよ。